PERT(Program Evaluation and Review Technique)は、プロジェクト管理において、プロジェクトのスケジュールを計画・管理するために使用される手法です。特に、不確実な要素を含むプロジェクトのスケジュール予測に適しており、プロジェクトを成功裏に完了させるために必要なステップや期間を視覚的に把握できるようにします。PERTは、プロジェクトのタスクをネットワーク図として表し、プロジェクトのクリティカルパスを特定するために用いられます。
PERTは、各タスクや作業工程を「イベント」として視覚化し、各タスクの所要時間を3つの推定値で計算します。
楽観的時間(最短時間):最良の状況下でタスクが完了する最短時間。
悲観的時間(最長時間):最悪の状況でタスクが完了するまでにかかる最大時間。
最可能時間:最も一般的な条件下でタスクが完了する可能性の高い時間。
これらの推定値をもとに、各タスクの予想所要時間を算出し、プロジェクトの全体的なスケジュールを予測します。
不確実性に対応:
PERTは、プロジェクトの所要時間が不確定な場合や不確実性が高い場合に有効です。3つの時間見積もり(楽観的、悲観的、最可能)を使ってリスクを考慮し、柔軟なスケジュール計画が可能です。
クリティカルパスの特定:
PERTを使うことで、プロジェクト全体のスケジュールに影響を与える「クリティカルパス」(最も時間がかかるタスクの連鎖)を特定できます。これにより、プロジェクトの進捗を遅延させる要因を特定し、リスク管理が容易になります。
視覚的なプロジェクト管理:
PERT図は、プロジェクトの進行状況を視覚的に示すネットワーク図であり、タスクの相互関係や依存関係が一目で理解できます。これにより、プロジェクトマネージャーやチームメンバーが進捗を把握しやすくなります。
計画と予測の精度向上:
複数の見積もり値を使うことで、単一の見積もりに基づくスケジュールよりも精度の高い計画が立てられます。これにより、スケジュール遅延のリスクを減らすことができます。
効率的なリソース配分:
クリティカルパスを特定することで、リソースを優先的に投入すべきタスクが明確になり、プロジェクトのリソースを効率的に配分できます。
時間の推定が難しい:
各タスクの「楽観的」「悲観的」「最可能」の時間を正確に見積もることが難しく、経験やデータに依存します。不正確な見積もりが行われると、全体のスケジュールが誤ったものになるリスクがあります。
複雑なプロジェクトでは煩雑になる:
大規模かつ複雑なプロジェクトでは、PERT図が非常に複雑になり、管理が煩雑になることがあります。タスクが多いプロジェクトでは、図が見にくくなり、効率的な運用が難しくなる場合があります。
リソースの考慮が不足:
PERTは主にスケジュール管理に焦点を当てており、リソースの制約やコストの詳細な管理には向いていません。リソースの制約を無視したスケジュールは現実的でない場合があり、別途リソース計画が必要です。
過度に楽観的な見積もりのリスク:
楽観的な見積もりが強調されすぎると、スケジュールが過度に楽観的になり、現実的な進行を反映できなくなることがあります。そのため、正確なデータと経験に基づいた見積もりが重要です。
動的なプロジェクトには不向き:
PERTは、静的なプロジェクト、すなわち開始時に計画が定まっているプロジェクトに適しています。プロジェクトが動的に変更される場合や、頻繁に要件が変更される場合には、適応が難しい場合があります。
PERTは、不確実性の高いプロジェクトのスケジュール計画に役立つ強力なツールであり、プロジェクトの全体像を視覚的に把握し、クリティカルパスを特定するのに役立ちます。ただし、正確な時間見積もりが難しいことや、複雑なプロジェクトでの使用には課題があるため、プロジェクトの性質に応じて適切に使用することが重要です。また、PERTはスケジュールに焦点を当てたツールであるため、リソース管理やコスト管理を別途行う必要がある点にも注意が必要です。